宮崎県と大分県にまたがる祖母・傾・大崩山系は、九州最高峰級の急峻な山々や美しい渓谷などの独特の景観美を持ち、ニホンカモシカ等の稀少動植物の宝庫としても知られています。この地に暮らす人々は、このような豊かな自然を守りながらも、農林業などで上手に活用しながら生活してきました。このように、人と自然が共生してきたこのシステムは、自然環境の保全と利用を図る上でも世界的に見ても重要なモデルとされ、平成29年6月にユネスコエコパークに登録されました。

エリアの紹介

祖母・傾・大崩ユネスコエコパークは、宮崎県と大分県の6市町(宮崎県:延岡市、高千穂町、日之影町、大分県:佐伯市、豊後大野市、竹田市)で構成されています。

  • 車(延岡市内へのアクセス)
    • 宮崎空港→東九州自動車道経由で約80分
    • 福岡市 →九州自動車道、大分自動車道経由で約210分
    • 大分市 →東九州自動車道経由で約90分
    • 熊本市 →国道57号、325経由で約150分
  • JR(延岡市内へのアクセス)
    • 博多駅→特急列車で約240分
    • 宮崎駅→ 特急列車で約60分

この地域の急峻な山々は、人を寄せ付けない存在であったことから、古くから山自体を神として敬う「祖母山信仰」や、「高千穂の夜神楽」に代表される自然の恵みに感謝する祭礼などが脈々と受け継がれてきました。一方で、山々は生活に不可欠な水や木材等、自然の恵みの象徴でもありました。人々は、この自然を敬いながらも上手に活用した農業や木材生産などが行われています。

大崩山

大崩山登山

鹿川キャンプ場

アケボノツツジ

ニホンカモシカ

取組

祖母山頂から

祖母山、傾山、大崩山

祖母山は、長い間九州最高峰と考えられており、信仰の対象となっていました。毎年春には周辺住民が連携して行う山開きが60年にわたって行われています。また、祖母山へと傾いた形からその名がついてた傾山の山頂からは九重連山や由布岳も望むことができます。大崩山はその険しさから九州最後の秘境と呼ばれていて、登山やボルダリングを目当てに多くの人が訪れます。

見立渓谷

美しい渓谷

祖母傾大崩山系の周辺には美しく見応えのある渓谷が多数所在しています。国の名勝および天然記念物に指定されている高千穂峡をはじめ、紅葉が美しい見立渓谷や、巨岩が迫力の祝子川渓谷などがあります。渓谷や渓流沿いの登山道は、手軽に豊かな原生林や自然体験ができ、春から秋にかけてトレッキングやハイキング、フットパスを楽しむ人が訪れます。

高千穂町の夜神楽

神楽、歌舞伎などの民俗芸能

この地域では、厳しい自然に囲まれた生活の中の数少ない娯楽として、それぞれの集落ごとに多様な民俗芸能が発展しています。豊作や安全を祈願する夜神楽や、農村歌舞伎、獅子舞等が各地で見られます。過疎・高齢化による担い手不足があるものの、保存会の結成などにより、後継者の育成が図られています。

森林セラピー

森林セラピーやオルレ

日之影町では、癒やしの効果が科学的にも証明されている森林セラピーが行われていて、トロッコ道跡を活用したコースや初心者が楽しめるコースなど、全6種のコースが設けられています。また、森林や田園地帯を散策しながら自然や景観を楽しむ観光発祥の「オルレ」の認定コースもあり、美しい里山や町なみを楽しもうと多くの愛好者が訪れます。

ソボサンショウウオ(写真提供:豊後大野市自然史友の会)

豊かな植生

この地域には、国指定の特別天然記念物で、九州地域で絶滅が危惧されているニホンカモシカや、この地域にのみ生息する固有種であるソボサンショウウオなどの稀少な動物が数多く生息しています。また、絶滅が危惧されている日本の国蝶のオオムラサキや、標高1,000m以上の高山で見られる九州特産種のアケボノツツジなども見られます。

めぐみ

豊富な食材や工芸品

食材としては、森林資源を生かしたシイタケの栽培が有名で、日本の生産量の1,2位を争う地域です。また、優良な肉用牛の産地としても、全国的に知られています。さらに、世界的な評価を受けた竹細工や、ヒノキやスギを使った「めんぱ」など、数々の工芸品が作られています。