田野・清武地域の農業は、耕畜連携による土づくりを行いながら、温暖湿潤な気候風土を最大限に活かし、年間を通した作付体系と「干し野菜」の伝統技術を多角的に組み合わせた露地畑作の高度利用システムとして発展してきました。豊富な採餌資源、農家の営みが相まってツバメが生息しやすい環境が守られています。こうした地域独自の農業システムが令和3年2月には、伝統的で重要な農林水産業として、国内の畑作地域で初めて「日本農業遺産」に認定されました。

エリアの紹介

田野・清武地域は、宮崎市南西に位置しています。

  • 田野・清武地域までのアクセス
    • 羽田空港から宮崎空港まで 1 時間 40 分
    • 宮崎空港から田野・清武地域まで車で約 30 分

江戸時代後期に自然災害の備えとして始まった「干し野菜」は、時代の流れと共に「千切大根」と「干し大根」生産に変化してきました。特に「干し大根」は、大根を丸ごと一本干す方法が伝統的に継承されています。大根を干すために組まれる「大根やぐら」が地域内に建ち並ぶ光景は、この地域ならではの農村景観です。また、雨乞いの太鼓である「雨太鼓」や「神楽」など、農業にまつわる伝統文化は、地域のコミュニティ形成、絆づくりに役立てられています。

船引神楽

千切り大根 田野・農林建設課撮影

ツバメ

雨太鼓

干した大根の葉を食べる牛の様子

取組

安井息軒

宮崎市安井息軒記念館

本地域の農業システムは、江戸時代末期の清武の偉人である儒学者・安井息軒が自然災害の備えとして、短冊状に切ったかんしょを干して乾燥させ、保存食として蓄えることを提唱したことから始まった。清武町にある「宮崎市安井息軒記念館」では、安井息軒の生い立ちや活躍など様々な資料が展示されている。

干し野菜農法と土地の高度利用

干し野菜農法と土地の高度利用

江戸末期より受け継がれてきた、野菜を太陽と風に干す農法は、竹の簾の上に大根を千切りに切って干す「千切り大根」や大根を丸ごと一本干す「干し大根」へと発展してきた。また、保水性や透水性が良く、ち密度が低い黒ボク土で、夏はかんしょや葉たばこ、冬は大根や高菜など1年中季節に合った野菜が作られている。

大根やぐら

大根やぐら

地域のシンボルである「大根やぐら」。標準的なもので、高さ約6m、幅約6m、長さ約50mにもなり、先人たちが培ってきた知恵や技術をもとに、生産者自らが組み立てを行っている。12月中旬には、大根やぐらのライトアップも行っている。

6次産業化

6次産業化

干し野菜は、漬物や干しいも、乾燥野菜などに加工される。近年では、「たくあんの缶詰」も商品化され保存食として活用されている。

次世代への継承

次世代への継承

「干し野菜」の知恵と技術を次世代に継承するため、小学生や高校生を対象に農業体験や「ハリハリ漬教室」などの食育講座を実施している。これらの活動は、農業への理解を深めることができ、将来を担う人財育成を図るための重要な取組となっている。

PRイベント

PRイベント

伝統農法を後世に残すため、地域と連携し、商業施設や空港で「大根やぐら」の実物の展示や地元特産品の販売を行い、地域内外へ周知を図っている。