四季折々の花々が出迎えてくれる最高の癒しの場。

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霧島ジオパーク

公開日:2021/8/16

四季折々の花々が出迎えてくれる最高の癒しの場。

6月の梅雨の晴れ間、「例年、この時期に見頃を迎える‟ミヤマキリシマ„の様子はどうだろう?」とワクワクしながら「えびの高原」へ。えびの市観光協会職員で、霧島ジオガイドの馬場 緑さん(61歳)に案内をお願いし、韓国岳登山に挑戦した。

いつ登っても素晴らしい。韓国岳の景色に感動。

韓国岳登山口からの眺め。周囲にはアカマツ林が広がる。

登山の前に、まず計画書に記入を!

えびのエコミュージアムセンターで、登山計画書に記入。登山者は必ず記入しよう。

 大小20もの活火山がおり重なってできている霧島火山群では、現在も硫黄山や新燃岳の活動が活発だ。2021年8月現在、硫黄山、新燃岳、御鉢の噴火警戒レベルは1(活火山であることに留意)となり、国道や登山道が一部規制されている。この日も、硫黄山からはモクモクと噴気が上がり、勇壮な姿を見せてくれた。
 登山口へと向かう前に、馬場さんに促され、えびのエコミュージアムセンターで登山計画書に記入する。登山口にもノートがあるので、必ずどこかで記入して登ろう。「センターでは火山情報、天気予報を掲示しているので、必ずチェックしていきましょう。山に‟安全“という言葉はないということを肝に銘じて、やるべきことはやっておきましょう」。

硫黄山の全貌が見られる展望所へ。

「硫黄山火口展望所」。噴気が上がり、壮大な眺め!

 硫黄山噴火後は、また新しい登山道が整備されている。登山口を通り過ぎるとすぐに、えびの高原を代表するアカマツ林が出迎える。ベビー松ぼっくりがかわいらしい。どの植物も緑が鮮やか。すぐ近くにカッコウの声が聞こえてきた。鳴き声は本当に「カッコウ、カッコウ」と聞こえるのがおもしろい。
 最初の休憩スポットは、馬場さんおすすめの「硫黄山火口展望所」。「登山道の途中にあるので、ぜひ立ち寄ってみてください。ここからの景色には感動しますよ」と馬場さん。おやつにいただいた、冷凍のえびの特産完熟キンカンが、ひんやり爽やか。山のおやつの定番になりそうだ。

おやつは、冷凍したえびの産完熟キンカン。ひんやり甘い♪

ジオパーク活動を始めたきっかけは?

宮崎の宝と呼べる景色にパワーをいただく。

リハビリのために山へ。植物との出逢いが楽しみに。

ベニドウダンの花は、こんなに鮮やかな紅色!

 馬場さんは、ほぼ毎週、えびの高原を訪れ、さまざまな山に登っている。「特に花が見られるのはほんの一瞬だから、『もう咲いてるかな』『今年は逢えるかな』と気になってそわそわしてきます。いつ来ても、美しく楽しい。素晴らしい景色を見せてくれます!」。
 えびの市内の出身とはいうものの、元々、登山が趣味というわけではなかった。「どちらかというと、山には興味がなく、登山は大変そうだと思っていたんです」。のめりこんだきっかけは、乳がんの手術を受けたことだった。「なかなか元気が出ない私を、兄が登山に連れ出してくれました。2009年に高千穂峰に登ったのですが、それがすごく気持ちよかった。リハビリにもなると思い、登山をするうちにどんどんハマっていったんです」。その後、霧島ネイチャーガイドクラブの定例登山会にも参加し、ジオパークガイド養成講座のことを知った馬場さんは、勉強してさらに霧島に魅了されていった。

ジオパーク活動では、登山ガイドも。

ツクシヒトツバテンナンショウ。秋には真っ赤な多数の果実が付く。

 霧島の火山の歴史や地質、植物、鳥類などの生物のことなどを学ぶガイド養成講座は、とてもおもしろかったそう。馬場さんは2010年に霧島ジオパーク推進連絡協議会よりガイドに登録され、えびのエコミュージアムセンターに勤務することになった。登山道パトロールもこなし、旅行会社・曽於市の楽しい山行きなどで霧島ネイチャーガイドクラブの先輩ガイドから指導を受けながらサブガイドを担当することも。九州大学の研究の一環として、硫黄山温度測定の補助要員としても活動を続けている。

表情豊かな韓国岳の魅力。

植生や岩盤の変化のおもしろさ。冬山もおすすめ。

7合目から以降はこんな岩盤に。マグマのしぶきが降り積もったものという。

 韓国岳登山に戻ろう。途中には、植物たちがいっぱい。紅色が驚くほど鮮やかなベニドウダンツツジ、白く愛らしいシロドウダン、ハルリンドウに、細長い形が美しいツクシヒトツバナンテンショウなど、次々と現れる花々に夢中になりながら、どんどん歩を進めていく。
 7合目あたりからは、まったく違った地質が現われる。ごつごつとした岩は、マグマのしぶきが降り積もり冷えたもの。この辺りからは、えびの高原の固有種ミヤマキリシマが目を楽しませてくれる。今年はやや花が少なかったそうだが、だからこそ、出逢える喜びもひとしお。「ミヤマキリシマは鹿の食害もないので美しく咲いてくれます。毎年毎年、こんな過酷な場所で咲いてくれて、ありがとうって思うんですよ」と、馬場さんは愛おしそうにミヤマキリシマを見つめる。
 どの季節も、山の美しさは変わらないが、馬場さんが特に好きな季節は冬。「南九州で雪遊びができるなんて、幸せですよね!雪に覆われた冬山の美しさ、霧氷がきらめく木々の美しさは格別です」。

ハルリンドウ。足下をよく見ながら歩くと、本当に多彩な花が。

「霧島は神様がつくった山」

山頂で味わうコーヒーは絶品。

馬場さんが淹れてくれたコーヒーで、ひと休み。疲れも吹き飛ぶ!

 いよいよ標高1700mの山頂に到着。目の前には高千穂峰と噴気を上げる新燃岳、眼下には真っ青な大浪池。疲れを吹き飛ばしてしまう素晴らしい景色だ。
 馬場さんお気に入りの場所で、お待ちかねのランチタイム。「道の駅えびの」で調達したおにぎり弁当がたまらなくおいしい。
「とっておきのコーヒーを淹れるわね」。今ではコーヒータイムが馬場さんの楽しみの一つとなっているそうだ。この景色で味わうコーヒーは絶品だった。

シロドウダン。道々、この花が楽しませてくれた。

霧島ジオパークのいろいろな楽しみ方を紹介したい。

大浪池を見下ろしながら階段を下っていく。

 帰路は大浪池を見下ろしながら下っていくコースをとった。階段はなかなか大変だが、うっとりする景色。ここでも一つひとつ、植物のことを教わりながら歩を進めた。
 駐車場近くの登山口から国道に出る。登山後の楽しみは、温泉。白鳥温泉上湯の蒸し風呂は、疲れた心身を癒やすのに最高の場所。天然の蒸気による蒸し風呂はとても珍しいのだとか。別棟に大浴場があり、この露天風呂からの眺めも素晴らしいので、時間があればこちらの湯船も堪能したい。
 馬場さんは今後、観光協会主催のツアーガイドも担当する。「霧島ジオパークのいろいろな楽しみ方を紹介したい」と意気込む。「地球が年月をかけ、人知の及ばないバランスで、この風景ができています。ここに来ると、本当に神様がつくった景色だと思うんです」。

馬場さんが好きな冬山は、息をのむような美しさ。(馬場さん提供)

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