延岡の山は魅力いっぱい。アウトドア体験の宝庫。

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祖母・傾・大崩 ユネスコエコパーク

公開日:2021/11/1

延岡の山は魅力いっぱい。アウトドア体験の宝庫。

 延岡市中心部から曲がりくねった道を車で走ること約1時間。祝子川(ほうりがわ)渓谷上流の「大崩の茶屋」で今回の案内人・馬場和久さん(62歳)と待ち合わせ、「神さん山(かみさんやま)」へ向かった。目の前には県内最難関の秘境といわれる「大崩山」がそびえる。
馬場さんは、元新聞記者。現在は、印刷物や映像を企画・制作する「0982株式会社」の代表取締役であり、「NPO法人ひむか感動体験ワールド」、通称ノベ☆スタの事務局長も務めている。神話や歴史を熱っぽく語りながら、ガイドも担当。2017年6月に登録された「祖母・傾・大崩ユネスコエコパーク」の魅力を発信している。

祝子川に残るホオリノミコトの伝説

奥に見える大崩山は、標高1,644mの祖母傾国定公園を代表する山。九州最後の秘境と呼ばれる。

遊んだり産湯に使ったりしたといういわれも。

祝子川温泉美人の湯敷地内にあるホオリノミコト像。ウサギ狩りをしていたのかも。

 馬場さんから、祝子川周辺の神話と歴史の話を聞きながら、神さん山に向かう。祝子川渓谷には、天孫降臨の神ニニギノミコトとコノハナサクヤヒメの間に生まれた3人の皇子の1人ホオリノミコト(山幸彦)が遊んだところという話や、川の水を産湯に使ったという伝説が残っている。「そこから名前が付いたという説もあります。ここから見上げる大崩山がまたきれいでしょう」。「祝子川温泉美人の湯」(水道設備復旧工事のため、2022年2月か3月頃再開予定)には、平成21年に建立されたホオリノミコト像もある。
 そこから少し道を上ると、巣野津屋庚申塔群(すのつやこうしんとうぐん)があった。石碑が9本並んでいる。庚申塔とは、庚申(かのえ・さる)の夜、無病息災を願いながら眠らずぬ過ごす庚申祭りが行われていたところ。碑文の判読は難しいが、ここに集められ残っていることが興味深い。

地域の庚申塔を集めた巣野津屋庚申塔群。

神さん山の神秘的な空気に包まれる

三角岩の両隣の巨石は、高さ約24mも!神様と人間の世界の中継地点といわれる。

古代人が天体観測をしたといわれる跡も。

竹林の間を上る。徒歩10分程度だが、歩きやすい靴を準備して。

 神さん山の入り口には、子どもたちが描いたかわいらしい看板が立っている。これを目印に、竹林の間の山道を上ること約10分。突然、目の前が開け、畏れを抱くような2つの巨石が現れた。高さ24m、2つを合わせた幅は約30m。巨大な岩が絶妙なバランスで支え合っている。間には、2mほどの正三角形の三角石があり、人の手に成るものか、自然の偉業か、謎を感じずにはいられない。
 「本当にきれいな正三角形なのが不思議でしょう。ここは神様の世界と人間の世界とを結ぶ中継地点といわれていて、石に抱きつくとパワーがもらえるといわれているんですよ」。馬場さんに促され、手のひらを当てたり、三角岩に抱きついたりしてみる。巨石の間に立つだけで、大地の力を感じて、敬虔な気持ちが湧いてくる。たしかにここは、神様の山‟神さん山“だと思う。
 神さん山の正式名称は、巣野津屋洞窟遺跡。この周辺からは縄文時代前期、中期の石鏃(せきぞく・矢じり)や石匙(せきひ)が多数出土しているそうだ。
 巨石の向かい側には、月と太陽らしき形が彫られた岩が。「ここよく見て」と馬場さんが指す場所を見てみると、キラキラと光る石が並んでいる。北斗七星の形が彫られた窪みもあった。古代人が天体観測に使っていたのではないかともいわれている。

中央の白い線状部分は、キラキラした細かい粒石が並んでいる。

アウトドアのプロが集結。「ノベ☆スタ」で‟アウトドア天国”を発信!

SNSでも人気の「パックン岩」。地元の人が‟ほこんたけ“と呼び、神様の山と崇めている鉾岳にある岩

三町合併を機に観光を強化。魅力がザクザク。

祝子川渓谷から見上げる大崩山。四季折々の姿を見せてくれる。

 馬場さんが事務局長を務めるNPO法人ひむか感動体験ワールド・ノベ☆スタは、祖母・傾・大崩周辺の大自然を活かし、アウトドアのプロが集結。登山やロッククライミング、トレッキングやサイクリング、アウトドア料理などを企画し、多くの人を魅了している。平成22年に設立された「のべおか感動体験案内人連絡協議会」が前身で、平成24年にNPO法人となった。
 延岡生まれ延岡育ち、「城山が遊び場だった」という馬場さん。新聞社を退職してすぐに、この活動に加わることになった。「延岡が周辺3町と合併をして、北川町にある大崩山や北方町の比叡山、北浦の海を活かした観光振興ビジョンをつくりました。僕は先輩に呼ばれてワーキンググループに参加したんです。そこで出た案で、海や山や川を案内する人たちを核にしようという話があったのがスタートでした」。
 延岡発祥チキン南蛮党や、別府のオンパク「別府八湯温泉博覧会」を参考にした「えんぱく」を始めたのもこの頃だ。馬場さんはそのすべてに関わってきた。

 最初に始めたのは、海、山、川の人に声をかけること。アウトドアの楽しみを知るプロが集まってきた。現在は、ガイド・アウトドア関係の会員数は約25人。これまでの活動の中で、パックン岩(コンピューターゲームのキャラクター「パックマン」にそっくりの巨岩)というSNS発のスターも誕生した。「ここはクライマーしか見ないような場所。登山道じゃないので、なかなか来ない。登山者が見つけたんです」と馬場さん。まだまだたくさんの宝が隠れているようだ。

ロッククライミング体験は、中学・高校生の体験でも人気。忘れられない思い出になりそう。

登山から初心者向けまで自然の中で、さまざまな体験ができる場所

「延岡市民協働まちづくりセンター」で自転車をレンタルすることもできる。サイクリングコースを走ってみよう。

地元の子どもたちに愛着と誇りを持ってほしい。

冬季は、氷結する落水の滝(おちみずのたき)トレッキングを開催。宮崎県内でこんな景色が見られるなんて!

 ユネスコエコパークに登録されたことは、ノベ☆スタにとっても追い風となった。現在は、地元の学校も、ロッククライミングやパックン岩登山に訪れている。
 今後は、冬季のアクティビティを強化することが課題の一つ。そのため、フットパスのコースを考案し、サイクリングも併せて推進する。延岡市中心部にある、10km程度の初心者向けコースもあり、レンタサイクルも充実。広報は馬場さんが得意とするところ。ハードルの高い大崩山登山やロッククライミングから、初心者が気軽に体験できるサイクリングやフットパスまで、選択の幅が広がり、魅力はさらに大きくなる。今後は、継続していくために、送迎もプランに組み込める旅行業登録なども視野に入れて考えているという。
 「延岡の自然の魅力は無限にあります。子どもたちにも地元のことを知ってもらって、好きになってもらって、自慢してもらって。体験を通して郷土に愛着と誇りを持ってほしいと思います」。

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