1年に60本しか採れない。
自然の恵みが詰まったメイプルシロップ。

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祖母・傾・大崩 ユネスコエコパーク

1年に60本しか採れない。<br />
自然の恵みが詰まったメイプルシロップ。

宮崎県北部に位置する延岡市北方町上鹿川。秘境と言われ人口100人にも満たない小さな里山で、100%天然のメイプルシロップを作っている人々がいる。1年にたった60本しか採れないそのシロップは、1本(100ml)5800円(税込)と高額にも関わらず、出せば完売という人気ぶりだという。ほぼ予約で売れてしまうが、一部は延岡市ふるさと納税で販売予定だという。価格の一部は、森の環境保全活動に役立てられている。
かつて林業で栄えたこの村は、全国の里山と同様、林業の衰退とともに、高齢化の一途を辿っている。そして、人の手が行き届かなくなった森では鹿の食害により畑が荒らされ、木の新芽を鹿が食べてしまう。そのような背景がある中で、森づくり活動団体「フォレスト・マントル上鹿川」の女性部が立ち上がり、国有林のイタヤカエデからメイプルシロップを作り特産品にする活動「メイプルの会」が3年前より始まった。

”上鹿川に自生する国有林の樹液をシロップに”

「出てちょうだいね」と声をかけながら毎日森に行く楽しみ。

「メイプルの会」代表の西京子さん

ひとつひとつ。木と会話をしながら。

上鹿川の100%天然のメイプルシロップは、2月〜3月に採取され作られる。「メイプルの会」代表の西さん(62歳)は、毎日山に入り、ひとつひとつカエデの木を回り「今日はどのくらい出てるかな」「少し分けてちょうだいね」と声をかける。国有林であるイタヤカエデ70本の木から少しずつ樹液(メイプルウォーター)を採取し、ある程度溜まったら持ち帰りシロップ作りに取り掛かる。木から出てくる樹液(メイプルウォーター)は、透明でほのかに甘い水でサラサラしている。これをほぼ1日煮詰めてシロップに加工する。

メイプルシロップの生産量は、天気や自然の環境に左右される。「木によって出る木があったり、出ない木があったり」「同じ木でも出る日出ない日」「木が生えている場所によっても違います」「今年は去年よりも出が悪いので、半分くらいの量しかできないかもしれない」自然の木を相手にしている仕事なのでどうにもできないこともある。今後、樹液の確保や生産性など特産品としての課題はあるが、「やっている人が楽しくなければ意味がない」と西さんは語る。

イタヤカエデからメイプルウォーターを採取。

ユネスコエコパークに登録されて。

2017年に大分県と宮崎県にまたがる祖母(そぼ)・傾(かたむき)・大崩(おおくえ)山系は、独特な景観美を有する地形地質によって多様かつ貴重な生態系が発達している地域としてユネスコエコパーク に登録された。上鹿川は、豊かな自然を人々が敬い、守り、その恵みを上手に活用しながら暮らしてきた地域である。

西さんは「素直に嬉しく思う。上鹿川地域の人たちは、ずっと自然とともに暮らしてきた。自然や森を大切に思い、暮らしながら森を守っている。ユネスコエコパークに登録されたことで特別感を持ったりはしないが、地区外の人にも上鹿川を知ってもらえることは嬉しい」と話す。

樹液(メイプルウォーター)からシロップになるのは、わずか1/60。

同じ木はひとつもない。樹液が出る量も違うし、 日によっても違う。生きているんです。

◎メイプルシロップの作り方

1、イタヤカエデから樹液を採取 (40ℓ) 

2、ろ過し、大鍋に移し薪で10リットルになるまで炊き上げる。
(約9時間)

3、再度ろ過し、中鍋で糖度37〜40度くらいになるまで炊き上げる。
(約8時間)

4、仕上げの小鍋で糖度66度くらいまで炊き上げる。
(約4時間)

5、メイプルシロップの出来上がり(約6.5ℓ)

「楽しく活動できるのが一番」と語る西さん。

上鹿川のメイプルシロップは色が濃くて香りが高いのが特長。

上鹿川の自然を守るために。

山道を進んでいくと、国有林のイタヤカエデの林がある。

森を守り、持続可能な地域づくりを。

「森の中で仕事をするのが楽しい」と新本さん。

西さんが活動を始めるきっかけになった理由は2つある。ひとつは、椎葉の民宿「龍神館」のご主人が自家製メイプルシロップを作っており、その研修を受けに行き感銘を受けたこと。もうひとつは、森の活動をしていくうちに、「木はお金にならない」など森の木の価値がないがしろになっている現実を知ったこと。そこで西さんは地域の人が森の木を大切にできるような活動をしたいと考えた。「自然からの恵みを大事にしたい。山の木が経済活動に結びつくということを地域のみんなと挑戦したかった。」と話す。

3年目を迎えて、作り方がわからないところからスタートし試行錯誤してきた。最初は瓶詰めした時に木のクズが入ったり、トラブルもあったが延岡市の協力もあり、品質管理も向上してきたと言う。上鹿川でメイプルシロップを作っているという認知度も少しずつ上がってきた。「1人ではできなかったことが、国有林と地域の力と行政とタッグを協力しながら一歩一歩進んでいる。うまく回るようになった」と西さんは笑みをこぼす。

「関わる人たちが、楽しい、嬉しい、やってよかった」と思っていくれることが重要。喜びを感じなければ続かない。最初の頃と比べても活動する人の意識も段々と変わってきた。「私たちが楽しんでいる姿を見てもらうことで、上鹿川の魅力を地区外の方にも知ってもらいたい」上鹿川の自然と里山の暮らしを守るため西さんとメイプルの会の挑戦は続く。

「仲間と共に上鹿川でしかできないことをやりたい」と語る西さん

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